T・ZONE.の新CEOが再生計画を発表
「AKIBA PLACEは社運をかけた店舗」

5月20日発表



 「秋葉原を訪れるマニアユーザーだけを対象にした事業展開に特化する」--6月1日に株式会社T・ZONE.に社名変更するCSK・エレクトロニクスの安井淳一郎代表取締役会長兼CEO(ヴィーナス・ファンド代表取締役)は、今後のT・ZONE.の再生計画を明らかにした。

 安井CEOは、「専門店が専門性を生かすためには、専門性を認めていただける人たちを対象にするのが最適。当社は、PC自作パーツではナンバーワンのブレゼンスを誇っており、今後は、すべての経営リソースを秋葉原を訪れるようなマニアユーザー向け事業に投入する」とした。

 同社の試算によると、秋葉原のパソコン販売店は現在170店舗。そのうち約120店舗でPCパーツを取り扱っている。「T・ZONE.PC DIY SHOPはそのなかでも最大規模で、年間40億円程度の年商がある。平均するとPCパーツ店の年商は1店舗あたり10〜15億円であり、秋葉原のPCパーツ市場全体で1,200〜1,800億円程度の規模となる。T・ZONE.はこのなかで200〜300億円の売上確保を目指す」(横山隆俊代表取締役社長兼COO)として、「この領域を狙っても十分事業が成り立つ」と説明した。

安井淳一郎 代表取締役会長(CEO) 横山隆俊 代表取締役社長(COO)

 具体的な取り組みとして、店舗展開では、5月31日にT・ZONE.ミナミ本店を閉鎖し、同日にT・ZONE. AKIBA PLACEをオープンする予定で、これによって、秋葉原はPC DIY SHOPの2店舗体制とする。また、現存する吉祥寺、大阪・日本橋の店舗に関しては、「現在、モニタリング期間と位置づけており、秋葉原と同等の展開あるいは地域特性を生かした展開ができなければ、大幅な業態転換もありうる」(安井CEO)としたほか、「現段階では具体的な新規出店計画はない」として、あくまでも秋葉原の2店舗を中心とした展開を行なう方針を明らかにした。

戦略のプレゼンテーション
オリジナル商品パッケージの試作品

 T・ZONE.の具体的な事業展開としては、徹底したマニア向け製品戦略を掲げ、「台湾からの直輸入品や、オリジナル商品などによる“こだわり商品”選定を行ない、新たにT・ZONE.独自のパッケージを採用したパーツ製品群を取り揃えたり、T・ZONE.しか扱っていないハードディスクなどを扱うなど、他店との差別化を図る」(横山COO)とした。

 具体的な例として、ノートパソコン用ハードディスクをIBMからディストリビュータを通じて調達、銀色の簡易パッケージで包装して、低コストで流通させる製品を見せた。また、上級者向けのBTOパソコンの提供を開始することを明らかにした。

 「マニアユーザーが求めるスペック、そして不要なスペックを最も知っているのが当社である。その強みを生かして、マニアが満足するスペックを追求した製品をBTOの形で提供する」(安井CEO)として、低価格戦略とは一線を画した商品を供給する考えを示した。これを独自ブランドパソコンとして展開する計画。

 また、ハードディスクやメモリの換装、製品の塗装、各種設定などのサービス提供のほか、メーカーに対して店舗の一部を提供し、T・ZONE.の店舗運営ノウハウを活用した店舗プロデュース事業、地方のユーザーなどを対象にしたマニア向けEC事業展開などを予定している。


 一方、同社では、アニメマニアユーザーを対象にした「AC(アミューズメントコンテンツ)事業」を強化する考えを示した。

 同社では、100%子会社に美少女アニメソフトなどの流通を手がける「ジェイ・ノード」があり、同社を核に事業を加速させる。

 「いまや、秋葉原は、パソコン購入者よりもアニメユーザーが多い日もあるくらいで、秋葉原の重要なトレンドといえる」(安井CEO)としており、「これまでのようにソフトを流通させるだけでなく、独占販売権をもった商品を拡大したり、中小規模の開発メーカーの支援やスタジオスタイルの開発環境を促進することで、独自ブランドの製品を立ち上げたい」と、新たな事業展開に意欲を見せた。

 なお、今年度の業績予想については、売上高で上期(4〜9月)が68億9,000万円、下期が59億5,500万円の合計128億4,500万円。営業利益は上期がマイナス4億4,700万円の赤字に対して、下期が1,700万円の黒字、通期ではマイナス4億3,000万円の赤字。経常利益は、通期でマイナス3億9,000万円、当期利益は、通期でマイナス6億9,400万円の赤字とした。

 安井CEOは、「T・ZONE.ミナミ本店が大幅な赤字を出しており、再建計画のなかでは閉店せざるを得なかったのが実態。4月、5月は、この赤字が計上されており、最終利益(当期利益)のマイナスも閉店のための特別損失があるため。T・ZONE.ミナミ以外はすべて黒字となっており、これが閉店する6月以降は粗利率が改善し、営業収益も改善する。ただ、年間を通じては今期は赤字となる。今後は四半期ごとに情報開示をすることで再生計画の進捗状況を明らかにしたい」と話した。

既にポイントカード会員にはサービス終了の告知が行なわれている

 T・ZONE.ミナミから、T・ZONE. AKIBA PLACEへのリニューアルによって、フロアの賃貸費用だけで年間6億円のコスト削減が可能になるほか、POSシステムなどの社内情報システムを簡素化することで年間2〜3億円のコスト削減が可能になるという。

 「従来のシステムは、全国展開を想定したものであったこと、さらにポイントカードのサービスを維持するために、これだけの投資が必要だった。5月末でのポイントカードの廃止は、これだけの投資メリットがないこと、今後、秋葉原を商売の対象とすることで、お客の顔が見える商売が可能となり、ポイントカードは必要ないと判断したことが要因」(安井CEO)などとした。

 また、年功序列型の人事制度を実力主義へと移行するとともに、組織の階層を4段階削減、全社員を年俸制に移行するなどの制度も導入する。

 今回の新事業方針は、T・ZONE.の得意分野にリソースを集中する一方、事業を縮小する「縮小均衡型」の経営再建策となっている。そうした意味でも、重要な試金石となっているのは基幹店舗となるT・ZONE. AKIBA PLACEの成否次第といえるだろう。

 安井CEOも、「我々のビジネスモデルが通用するかどうか、社運をかけた店舗オープン」と位置づけている。

 また、BTOパソコン、独自プランドパーツ、ソフトの独自ブランド展開というように、「小売りからマニア向け製品を手がけるVAV(バリュー・アデッド・ベンダー)への転換を目指す」(安井CEO)との方針が、不良資産を増やす温床にならないか、との不安要素を指摘する声もある。

 いずれにしろ、いよいよT・ZONE.の再生計画が具体的に動き出す。まずは、T・ZONE. AKIBA PLACEの動向に注目が集まる。

□CSK・エレクトロニクスのホームページ
http://www.tzone.com/
□関連記事
【5月15日】CSKエレ、経営陣を刷新
〜ヴィーナスファンド代表取締役が会長に就任
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0515/tzone.htm

(2002年5月20日)

[Reported by 大河原克行]

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