|
【泣き笑い】
<ビーズクッションMOGU> 女性用下着がヒント
石田喜信さん エビス化成社長(31歳)
|
石田喜信さん | 弱冠24歳、3代目の社長が継いだのは従業員10人の大阪の町工場。火の車だった。主力商品は発泡スチロール製の箱や緩衝剤。納入先は、次々に海外に生産拠点を移していた。95年のことだ。
このままでは、生き残れない。「従業員と家族は絶対に守る」。会社の命運をかけて開発したのが、直径0.5ミリのパウダービーズの入ったクッションだった。
発泡スチロールの成型技術を生かしつつ、付加価値を生み出せる製品はないか――。社長としての初仕事は、事業転換の模索だった。まず、片手間で扱っていた発泡スチロールビーズを布に詰め、クッションにしてみた。
魚を入れるトロバコの納品をこなしながら、3カ月に1度、発泡スチロールの球をTシャツの綿ニット地に詰めたクッションを手に、全国をまわった。コネはない。クッションを扱っている店があれば飛び込みで入り、面会予約が取れないときは、担当者が戻るまで、玄関で待った。
成型工場を閉鎖し、インテリア素材メーカーとして、背水の陣で臨んだ3年目。ようやく好機が訪れた。若い女性に人気のインテリアショップが置いてくれたのだ。社内では不評だった「クタッとした感触」が予想外の好評を博し、1カ月に20個売れれば良い方なのに、1日で300個を完売した。
この好機を逃すわけにはいかない。もっと触感を良くするには、何が必要か。
砂利道を歩くより、砂の上を歩く方が柔らかく感じることを思い出した。当時のビーズはヘルメットの中材用で直径は1ミリ程度。それを半分の大きさにして、あとからガスを注入する方式で、粉雪のようなサラサラ感をだした。
ビーズの流動性を生かすには、もっと伸びの良い生地も欲しい。ある業界紙で見た「女性用インナーフェア」の文字。「これだ」と思った。
肌触り。そして伸び。下着はこれを兼ね備える。「社長、頭おかしなったんとちゃいますか」。そんな声に負けず、製品片手に乗り込み、素材メーカーを口説いた。
数カ月後。全国展開するや月産10万個を完売した。欠品は5割に達した。今や社員は200人。年商は今年、50億円に達する見込みだ。 プニャッ。フニャッ。なんともいえない触感。癒やし系の品ぞろえで、現代のストレス社会に挑む。
(竹石涼子)
(11/12)
|
|